続JABRO演舞場-QQQの実態




第一章 改革するは我にあり(かも)


第一話

おお、墨田おるか?と声が途中の階段から聞こえたんで、ドアを開けようかと思ったら向こうが開けた。
「墨田ぁ〜おまえこんなガード下にライブ聞きに来る奴らなんぞおるんかw。」ガゴオオーーーーー(快速通過)
それは、昨年当局に○百万しこたまとられて店をたたんだアニキだった。

「おまえが店やってることはハービーから聞いたんだが、何でもオーネットの調子っぱずれのインチキJAZZよりさらにたちの悪い連中を集めてるらしいじゃないか。そんなもんでやってけるとはやっぱ大都会はちがう。」

「アニキ、まぁ音楽人口の0.1%の領域に賭けておるんですわ。今日はどうしましたですか。」

「いや、実はもうどうもJAZZだともともと儲からん上に、当局もむちゃくちゃやってくれるんで、70年代なら徹底抗戦のワシとはいえ、この年じゃもう流れに任せるままよな。で、結局30年やったJAZZ喫茶しおさいではあったが、それは終了と言うことにあいなっちまったわけだ。で、ハービーに相談したところが、これからはロックだという訳なんだな。30年のキャリアを生かして若い連中に魂を伝えてやれよ、オレも米から見守ってるぞ、とか、ぬかすんで、ま、余生はそれでもいいかと最近思ってる次第だ。で、こういう場合はまず大都会の状況をつかんでおけというんで、超割つかってきたのよな。」

「ロックすか。ロックはロックで結構たいへんかもしれんですよ。まぁ、だいたいは合理的にやっとるようです。ギブアンドテイクというか、ま、ノルマきっちり払って、てめぇらのやりたいようなことやる連中が集まる自治組織みたいなもんですわ。ある意味、こっちがまともなやり方だったですかねぇ。西やんの店なんぞ、もう連日3バンド出てほとんど勝手なことやってるらしいんですが、ちょびっとは当局モノやるやつらもいるようで、結局月3万5千円お支払いだそうですわ。やったごとに子割で払らえんのはどうも得心いかんとぼやいてますけどね。」

「おまえ、それ西が間違ってるだろ。やった分だけ払えばよかろうが。」

「それが島の法律っちゅうので音楽の場合それは出来ないそうなんですわ。おいらも新聞が出来てなんで音楽はできんのかのぉ、と一緒にやけ酒くらったわけですがね。ま、ウチの場合は当局モノは全面禁止ですんでなんの問題もないのですが。西やんの場合はそうもいかんのです。」

「お前らはアホとちゃうか。ワシがなんで店たたんだかわかっちょるんか?レコード一曲かけて40円で3650日分総額計算されてんだよ。個別で計算されてんだよ。こっちが払う時にも同じに払えるに決まってるだろ。お前らちゃんと当局の徴収規則書読んでるんか?」

「いや、あれ読もうとネット開くともう頭痛がしてくるんですわ。がんばってると何か胸が苦しくなってくるし。」

「それはよく分るが、ワシみたいに○百万とか言われるといやでも読まざるを得ないわけよ。そう言う者の身になって一度考えてみろ。ま、お前ら担当の若いのに、それは出来ません、と言われてそのまま信じてるわけだろ。当局がデマまで言ってるわけ無いと思ってるわけだよな。甘いつーの。nま、おまえらのところに来る連中もほんとはよく深い筋書きは分ってないんだろうさ。それにワシら以上に鉄の作戦マニュアルには逆らえん訳だしな。で、たとえ頭が割れそうになってもこらえてあの徴収規則書を読んでいくとな、ちゃんと一曲ごとに払えるように書いてあるワイ。ライブは90円よ。」

「げ、アニキ、嘘っしょ?」


第二話

「しかし連中は月極払い以外ないんだと自信満々ですぜ。そう決まってるもんだとどこものっけから言われてますけどねぇ?なにせこちとら学問なんぞはトウシロウですからね。あのズラズラ長い規則書をまともに読めば結局当局の言うとおりなんだろうなと思わざるを得ないわけでして。あんなもんは到底ちゃんとは読めそうもないのは全員最初の能書き二,三行でインプットされちゃってますわ。あんなもん業種ばっかで10も15もあるんですぜ。オイラには世の中飲み食いさせる店がそこまで細かく別れるとは思いませんですけどね。まぁこれ音楽があるから悪いんでしょうな。音楽さえかけなければ、店の種類はせいぜい酒のあるとこと無いとこのふたっつくらいでしょ。その音楽が災いしてやたらと学問じみちゃったのがオレらの商売だとなると、こりぁなんとも皮肉なもんですなぁ〜。まいりましたねぇ。nで、こうなっちまうと、なんだかんだ言ったって、どちみちこっちが不勉強と言うことで要所が分ってないんだろうなと、理論というのは商売とまた別に難儀なもんだと、こうなるわけです。そう思うとオイラたちもいたって真面目なわけですな。しっかし、ホントに90円とまで書いてあるんですか?じゃ、さらにそれで払えんとする法則を作る必要がどこにあったんですかねぇ?はじめから書かなきゃよかないですか?それもまたゲせないことにならんですか?」

「いやそれ、オイラもにわかには信じきれんでな、そっからまたアニキに突っ込んでみたんだわ。要はこうだ。確かに一般小市民の心情からすれば、月何万かからしかハコ出せないんじゃ、よっぽどやりようを思案しないときついわけなんで、普通当局モノをやってない分に関して払いたくないのは当たり前です。ちなみに、オイラの考え抜いた末の究極の選択なんですが、当局が何か言ってきた時は即座に当局モノは一曲もやっとりませんと突っ張れればよいという発想で、そのへん思案重ねまして。そりゃ1年365日演奏曲目きっちり付けてさえおけば、やってないモノをやってるとは当局も証明できないわけです。で、ウチは基本当局モノ全面禁止とあいなってるわけです。いや、本当は60年代モノやらせろとか言うわけですよバンドは。やれブルートレインだのやれマイルストーンだのとね。しっかし所詮あんなもんはただのコードなわけですからね。それに、21世紀の今日、もはや昔みたいに大御所のをやったからって客も喜ぶわけでもないですぜ。他の店での話ですが、セントトーマスやったら女の客が、3曲目かわいいメロディーの曲気に入りましたぁ(Love,ってなもんらしいです。そんなんちょっとばかりやって月○万だと払ってられるかとバンド教育してるわけです。とはいえ、まぁそれもこれも防衛策としての究極の選択なんであって、なにもやりたいというもんをむりやりやらせないのがいいとまでは思ってるわけでもないのです。そうなると、あれです、その一曲90円すか? だったらそりゃ缶コーヒー飲むか飲まんかで一曲やるかやらないかの問題なわけですから、そりゃ、君たちどうしてもGm7じゃなくてブルートレインだということでやりたいなら、90円当局に払ってから来なさいでいいわけじゃないすか。そんな分りやすい風になってんだったらそれシカトする道理がどこにありますかね。てな話になったわけさね。」

「ん〜、前々からスミさんの店でのやり方は、ある種なるほど正論かつラジカル路線だとは思って気にしてはいるわけですが、どうもオイラの所はそこまでは踏み切れんのですよね。ポップ路線はポップ路線で一本筋が通った連中がいるわけです。正直このところウチで一番おもしろいのは、70年代昭和歌謡ノイズカバービジュアル系ちゅうのがいて、そいつらの場合ノイズのくせに全部当局モノですからね。西田佐知子とかね、まぁ、聞いても分りませんけど、論理的に徴収対象であることは確かです。昭和歌謡限定カバーちゅうのがやつらのポリシーなわけでして、それを変えろと言うわけにはいかんですからねぇ。そういうのがちょいちょいはおるわけでしてね。このあたりをネタにされたら、いざ裁判では勝てんでしょう。そういう感じですから、月○万でも支払って環境維持にコストかけざるを得ないんですわね。」

「そりぁそうだわな。ま、簡単に言えば、オイラみたいなとこや、西やんみたいなとこや、もっと当局モノ路線どっぷりのとこもあって、キャラの違いで役割分担みたいなことさぁね。それがもっと大規模ネットワークで音楽環境全体が成り立ってる、そういうこったろうな。どっかでがばっと儲かってるところもあるだろうが、それはそれでまぁよしなわけだが、ワイらみたいにギリでやってるハコというのも総合環境でいえば同等の重要性があるとは言えるはずなんよな。最低限音楽産業全体には多大な貢献はしとるよ。だって、西やんのとこに出てるバンド連中がどれだけ楽器とか機材とか買ってるか考えてみな。そういう連中の全体を考えてみれ。その産業を一手に支えてるぐらいのもんだぜ。ハマヤとかロードランドとかさ、あれらは国際的大企業だろ。おたがい持ちつ持たれつで回ってるぐらいは考えてもらわんとな。」



第三話


「でも、そうしたら、カウンターの横にな、箱とか瓶とかポンと置いといて、当局モノ一曲につき90円カンパみたいなことでどうなんだろか?で、月末に当局担当者がそれを回収に来ると。これでいけば、バンドが当局モノばんばんやってもこっちもなんら困らんし、当局としてみればバンドがやればやるほど儲かるんじゃないのかぃ? それにしても、当局は、月極てのはサービス価格なんであって、それでお前らにはやらしてやってるんだみたいなこと言ってるが、誰もそうは思っとらんちゅーの。当局がサービスしてるのは、ある程度がカラオケで最大は有線て感じだろぉよ? とどのつまり、アニキらJAZZ喫茶業界に至っては長期にわたる差別待遇で業界縮小の憂き目となっとるんじゃないの?だって、もともと同じ飲食業のくくりで、客からチャージも取ってないのに万で金とられる店と、ほとんどタダでよしってのがあるんだから、そりぁ10年20年そうしてれば、やがては商売がやりいい方が偏ってくのは当たり前よ。世の中もう九分九厘は有線らしいじゃないかぃ、それ自体が異常よ。ま、要はJAZZだクラシックだと妙にこだわって店やる連中というのは、逆に邪魔もんだってことよ。ウナギ売ってるのはこっちなんだからそっちは煙だけ流してくれっつこったろうな。しみじみこの30年振り返って見りぁ、或る意味そりぁ道理だったかもな。なるべく買ったらすぐ飽きて次を買ってくれと、こういうのが消費社会の原則だったわけだからさぁ。こだわりはいかんのだよ、こだわりは。買って飽きて捨ててくれと、これが望ましい。よってこの理論どおり、音楽もだらだら正体無く流すのはよしだが、JAZZ屋のオヤジみたいのが何でもかんでもよく知ってて、来る客来る客いらぬ知恵なぞつけてくれて、今度は客がウンチクたれるようにでも世の中なれば、それじゃ相当まともなものしか売れんじゃないかとな。そっちがそういうこだわりでやるんなら、だったらそれなりに払ってもらいましょうと。煙でやってくれる分はこんな安くなってるのにあんたらもバカですねってなことだ。nま〜そうあいなってるわけだよ。まぁこれまた前世紀に横行したリニアな思想の典型ちゅうかな。未だその信仰は厚いわけだが、実際は今世紀幕開け、その厨理論破綻後のケツ拭きから始まってるあたりがおもしろいんだがの(爆。」

「店長、で、そのカンパの箱の話はどうなったんでしょう。」

「おお、そうよ。いやさ、とにかくやった分のものだけきっちり払うということが商売の基本で、まとめていくらなら割引でこうなるてんだったら当たり前だが、それがバラより高くなってもそっちで払えってんじゃ、やつら小学校の算術もまともに考えられない頭か?と言うことだろ? 算術の初歩は足し算よな。バンドが一曲やる。ワルツ フォー デビイとか、ロンリーウーマンとか、イパネマの娘とかな。でそれごとにバンマスでもちょいと90円箱に入れとく訳だな。太っ腹なやつなぞ面倒なんで100円入れて10円ご祝儀みたいなこともあるわけだ。逆に、やってんのにばっくれてたりしたら、ワシなんかいざとなれば筋は通す人間だからな、「おいおいきっちり90円入れといてくれよな」てなもんで言わば当局のメンツも立てるぐらいのことはするわけだしさ。まぁそうこう一月やって千円ぐらいの時もあり、よくした場合は一万円以上の時も在りってな分けで、それは商売だから時の運さな。当局もなんだかんだで曲っちゅうもんを売ってるわけだから、そこはワシらと何ら変わるところはない。音楽運命共同体だな。にもかかわらず、万が一だが、当局が「こんな小銭の商売なんかできるか」なぞぬかしたなら、ここぞとばかり商売の基本を教えてやればよい。おいおい、まさかお前ら90円をはした金だと思ってはないだろうぬwぁ。一曲90円で日に5曲もやって30日それが続いてみろ、いくらに成ると思ってんだ、もう1万超えるんだぞっ、こちとらまともに1万稼ぐのにどんだけ汗水流してるか知っとけぃ、てな具合でな。やりようによっちゃ、かえってそっちが儲かる話じゃないのか? そうした筋書き考えるのが商売ってもんじゃないの(w、とかな。なにせ当局なんてものは専務あたりの現場も知らない世間離れしたのが予算案出してるに違いないわけで、あれだTVの「踊ろう大捜査斑」の警視庁みたいなもんだろ。そっから作戦部隊に筋書きが流れて来てるだけのことでもって、そもそも大本がズレズレの机上の空論にも拘わらず、作戦部隊はいたって任務に真面目てのが問題なんだよ。そうじゃなきゃ、こんな一般人も当たり前の算術すら出来てない話が黙々とやり通されてるわきぁ無いぜ。あ、そうか、何も90円てのはワシらが言った額じゃないんだったよなぁ。別にここまで息巻くことはないのか。まぁそう考えるとハナっから1曲が90円というのはまともな料金じゃないかぃ。どうなってんだ?」

「店長、当局の場合オイラたちはやっても必ずちょろまかすという前提なわけですよ。当局の基本姿勢は全面的にそれですぜ。一般のCD買ってるお客にさえも「お前らは所詮盗む連中なんで監視してるから覚えとけよ」と全島レベルで公言してますから。この段階で商売人としてズレてます。」

「うわ、そうなんか。まぁこの世界確かに海千山千ではあるわけだがな。商売てもんはそこも含めての客商売なんだがなぁ。エリートての?学校の試験みたいに全問正解の商売てものを考えてんだろか?」




続く