グプタ期マトゥラー仏像の構造

八木橋司



ジャマールプル出土仏立像(ヤシャディンナ封建在銘 マトゥラーA5 グプタ時代/5世紀)

前の章で説明した初期マトゥラーの仏像造形の理論は、グプタ時代(五世紀)には流派の新たな解釈を含み展開した。グプタ時代主流の二派である後期マトゥラー派とサールナート派において共通の方法が採用されている。その革新の内容はこの像の解析図版によって詳細を知ることが出来る。この像が造形史上最も高度な領域に属すものである主因は同調の詳細確認により明らかとなる。





この像とこれを継承した飛鳥時代の像に関する解説

「花のかたち(3) マトゥラー造形理念の展開 そして東へ」掲載解析図版
法隆寺遺品飛鳥仏に継承されたマトゥラー仏設計理論




垂直方向への単位連結

上のジャマールプル出土仏立像の検証から明らかとなった像を規定する基盤構造は、初期マトゥラー派で確立した花のかたち三段階連鎖縮小単位を縦方向に複数繋なぐというものである。これは前理論の解釈的進展によって導かれた内容である。この契機が「花のかたち」のコンセプト延長上で、さらに大きく詳細な仏立像をデザインする方法を実現させたのである。



連結の単位 (花のかたちの三段階縮小)





花のかたちを連結させる構造

この図は縦方向三個の単位の連結で形成されている。180度回転させた単位二個それぞれを、一部の円(上部同心円または底部の二つの円)の共有によって、中央単位の上下に連結させている。






詳細の確認

ジャマールプル出土仏立像(ヤシャディンナ封建在銘 マトゥラーA5 グプタ時代/5世紀)








ジャマールプル出土仏立像 詳細図版 PDF


頭光

頭光の同心円がゲージの同心円と完全に一致していることが確認できる。円だけではなくゲージ側のいくつもの交点が正確に光背の詳細を決定していることが分る。像全体に及ぶ規程は正確にゲージに対応している。初期マトゥラー仏の場合、ゲージの中央の大きな円が光背に対応していた。グプタ時代の像では縮小連鎖法によって発生する同心円を光背に対応させる選択に移行した。これはサールナート派においても同じである。


歴史上の総合的展開
The Consecutive Constructive theory of Buddhism Arts and Ancient Mirrors

初期マトゥラー派、グプタ期マトゥラー派、飛鳥仏、チベット密教造形、に一貫する造形理論、および、それが大乗仏教以前の広域ユーラシアに期限が見出せることの説明。


to Section-1
Celts
Construction of ancient mirrors in China and Japan


investigate by
Jabrec-Art-Music