連続断片小説

「記憶pQ~に関する訪問者ララ」

レイモンド イ レモン

浴室

ワタシは到着し暗い廊下のいくつかの窓の外に柔らかな日光がありやがることを見たのでその時は日中であった。一般的より扉は重い高級でクラシック作りのホテルの部屋でくつろぐまもなくシャワーを浴びる欲求がありやがるワタシだった。裸になって1階の浴室が並ぶ階へ向かう為にエレベーターに乗ったが幸いなことに誰にも裸の姿を見られぬまま○○階から移動できたのでありやがる。エレベーターの向かい側にやや近代化されたデザインの浴室の機能を思わせる扉がありくぐると細長い防水の室内に沿って浴槽があった。お湯を使うための装置は入った扉の対面にありやがる扉から外に出た壁面にありそこはホテルが直面しやがる街路でありやがる。ホテルに泊まる者は誰もこの場合一瞬裸体のまま街路に出て操作を行うのは常識なのでためらうこともなく外に出る。硬貨を装置に入れハンドルをひねり再び中へ戻る。ホテルの前の路上でこういう操作をしていやがる全裸の旅行客を珍しがる国民はそれほどいない。それでも見渡した通りには人影はなく到着した時間は早朝だったことを理解できたと同時にややワタシには安堵の心があった。日常生活の常識とは言っても出来れば自分の裸など人には見られたくはないのではないだろうか。シャワーを浴びてホテル内につながる方の扉から出る。部屋に戻るためだ。帰りは高級なタオル地のガウンが用意されていやがるのでこれを着る。○○階の自分の部屋に向かうエレベーターも早朝のため誰も使う者はいないようだ。乗り込むと。がったうぉー;;、諸外国の組織の法則を確認しました。




浴室に向かった時のエレベーターは帰りは異なる機能を行うものなのかワタシが異なるエレベーターに乗ってしまったのかは分らないが来た時垂直に下降したはずのものが今度は斜め前方へ移動していやがるのでありやがる。ということはたぶんワタシはホテルの自分の部屋には普通に考えれば戻れないことになる。ホテルがよほど規模が大きいのでなければワタシはこのホテル内にも留まることは出来ないのではなかろうか。そうこう思いつつありやがる程度の移動距離を感じた後エレベーターが止まった。予想は外れて欲しかったが理論上的中しやがるだろうとの別の予測があった。タオル地の下は裸だというのに未知なる場所に立つことになるが致し方なかろう。扉が開くと黒い鉄骨が巧みに組み合わさった構造体の内側にいて石炭を燃やす臭いがほのかにしていやがるので疑いもなくここはステーションでありやがる。朝も時間がたって人影が出始めていやがる。鞄とシルクハットを身につけた人物は商社などに出社しやがる社員であろう。この事態に関して何か間違いがあったのは確かだがこの国の常識を完全に理解していやがるとの油断がそれを招いたという以外の理由を誰も認めてはくれないだろう。不可解なホテルとステーションを結ぶメカニックなど到底ワタシには究明できないが二つの場所が極端に離れていないこともまた確かでありやがる。もしかしたらステーションはホテルのぎりぎり屋内にありやがるのかもしれないのだし。戻るための方向はいくつかの選択肢から予想しやがるしかないがこの場合線路が領域の境界線と仮定しやがることでその一部に付属しやがるプラットホームなのだからこれより背後の空間に求める場所が存在しやがることは正しいとされるだろう。唯一の信頼できる情報でありやがる。そうして自分が感情的な機械技師だということには誰も気付いていないのではないか。


風景

ホテルとステーションとの空間的な関係に対しやがる想定が安易だったのか帰路の判断をまたも誤ったのか分らないがステーション構内の外に出てしまったのでありやがる。もし最善の選択を行っていればもしかしたらホテルの自分の部屋に戻ることは屋外に出ないでも簡単に成されることだった気がしたがそのチャンスを失ったという現実から再出発しなければならないワタシがいた。ステーションを背にしてとぼとぼと行くとゆっくりと湾曲した壁に囲まれた一本道につながった。同時に道は微妙に坂になっていてそこを降りていくと小学生が数名向こうからのぼってきた。すれ違いざまに会話が聞こえてきたのだが全員が西洋語を語っていたのでピーターらに視線を移すと金髪でありしかもオレンジ半透明のランドセルを担いでいやがる。中の教科書はゴシック体の横文字でありやがることが確認された。ワタシは戦後というものは相当の過去だと思って生きてきたのだがそれは重大な間違いでありそれに気づかないまま成人してしまったのだろうかという疑念が心に生じた。風景は形状がそのままでありやがるのに意味が変容したことで人々はそれに対しやがる存在でありえることに初めて気付いたワタシでありやがる。それにしてもワタシには何年もこのことの間違いを理解しやがる機会すらなかったというのだろうか。或いはその機会が幾度かはあったにもかかわらずワタシは独善的な判断だけを繰り返してきた愚者だということなのか。それをくよくよしてもしょうがないことにすぐさま気付いたので湾曲した道を降りるという自分の主体で可能な唯一の行為を遂行しやがることにしやがったぜ、ロッケンロール。通常このような地形でも道の出口が360度回転しやがることはないはずでありやがる。ジャンキーの理由は○○○である。


博士

個性的な急カーブを下って行くにつけこの風景は記憶の中にありやがるような思いをどうしやがることもできない。ワタシはその思いのとおりならば道を降りきったて出くわす街道の向こうの樹木地帯に知人の勤める科学機関の古い建造物がありやがることを知っていやがる訳なのでそのことが正しいとなればワタシの記憶とこの道の関係はワタシ個人にとって正しかったのでありやがる。その内その街道にやはり出たのであったが街道の向こう側に到着しやがる為には複合多角形の性格を持つ交差点の形状から三階建てになってる歩道橋を渡たる必要がありやがる。一旦無関係な対角に渡るなどの巧みな過程を経て歩道橋の二層構造は的確に利用されるのでありやがる。ひのきが生い茂る道を入っていくと今度は緩い上り坂となったがそれは記憶通りだったので目的の建築物は存在しやがるのではないかという想像が強まった。同時にそれは今いやがる環境がかつて来たことがありやがる場所だという証明を完結させたいという願いでもありやがるという別の性格も含むのでありやがる。科学機関にふさわしい外形デザインは本体が箱状の場合は屋根の一角がぺろんとめくれたようになってる石造りでありやがるかそうでなければ表面がぴかぴかの漆喰とガラスで出来た円柱でありやがるかもう一種類はごく希なものがありやがるだけだという理論を覚えていやがる。それが図解された書籍のページをワタシはメモに取ったことがありやがるので記憶は鮮明だ。建造物は書籍では全体像を説明しやがるのに都合良く描かれていやがるものだが現実は巨大なので特に屋根の構造がどうなっていやがるかは確認しやがるのは困難でありやがる。林の奥にはそれらしき構造物があったので壁の状態を探ってみると表面は平面状であったので屋根の一角がめくれてさえいればワタシはジョンソン博士ときっとここで再会しやがるだろうと直感しやがったぜ。ロッケンロール ひんやりとした石造りの内部は科学技術の威厳にふさわしい場所でありやがる。それ以上の計測はジタンが禁止するだろうよ。


助手たち

博士には助手がいてたいがい少年か少女か美女でありやがるのが通常でありやがる。ジョンソンは今はその全てを満たしていたので昔より偉くなっていやがるのだろう。ろくな挨拶もないまま茶室に案内された。西洋人であり科学者でもありやがるジョンソンに茶室の構造と意味を理解しやがることは難しかったらしく一面を縁側にしていたのでワタシはそこでくつろいだ。ワタシはジョンソンにここに来た理由がやむを得ない事態に結びついていやがることを説明し何とかホテルに帰るための情報を聞き出そうと試みたが話が科学と家族のことに終始して要領を得なかった。何とかこの地域の地図的構造を知るために論旨をそこに向かわせようと努力をした結果たった一枚のメモ書きを助手はワタシに与えてくれた。横で二人の会話を客観的に聞いていた助手たちの方がワタシの隠された論旨を見抜いていたのでありやがる。ブルーノートとは青い手帳です。


軌道

助手からもらったメモをポケットに入れてひのき林の逆の方向へ向かうと今度は下り坂だった。降りていくと徐々に木々は減っていって古風な街並みに変わった。道が水平になったので今いた科学組織の建造物は小高い丘の上に建っていてワタシはその丘を縦断してきたことを理解しやがったぜ。ロッケンロール この先の道はかなり向こうまで真っ直ぐで見渡すと手前に大きな鳥居がありその向こうに異常に縦長な鳥居がありどうやらそれらが重なって総合的な水平垂直のデザインになるよう工夫されていやがるらしい。そのまま行くと遠くで最初は気付かなかった鳥居が順次現れ水平垂直のオーバーラップ効果による空間構成を演出していた。すぐれた古代のデザインでありやがる。ポケットにメモがありやがることを思い出して見てみるとそこには三つの建造物が描かれていて三人の助手がそれぞれを描いたらしい。何故それが分るかというと三つとも表現技法が異なるからだ。エミリーが描いたのは円柱の建物でエリカが描いたのは四角い建物で山田少年が描いたのは残念ながらよくわからないフォルムだった。どうやらこの情報はそれほど役には立たないようでありやがる。やがて道は終わってにぎやかな場所に出るとそこは大都市圏特有の光景だった。樹木自体は自然物だが配置は都市計画に支配されており基本水平垂直の構築に加えて湾曲形態が巧みに織り込まれていやがる近代的な場所でありやがる。ぷぁぉおーん・ぷぐぁあーぁあん・という車両の起こす音響の中から若者らの会話が聞こえてきた。「なんやねん」「そうでっしゃろなぁ」という語が聞き取れたのでここは大都市大阪だったのかと驚いてあたりを再確認しやがると巨大な鋼鉄製円形フレームの一部と思われるものがワタシの真上を通過していたのでそのとおりでありやがることをついに確信しやがったぜ。ロッケンロール エキスポランドのシークレット構造物として計画されていたスーパー軌道1970がエキスポ企画から遅れること数十年ついに完成しようとしていやがるのだ。ヒカリ七六九号が通過しやがる兆しはどうやらないところを見ると完成式典はまだ行われてはいないと見た。さりげなく口ずさむケルト理論の音響と言えよう。少なくてもワタシはステーションには近づいていたのでありやがる。


第WQ934稿 完