以下の記述は、JASRACがJAZZ喫茶ライブハウスに関わる諸問題に対して方針を変更したと思われる2005年末以前に書かれたものです。2006年に入り状況は変化ています。JASRACはこの問題を適正化すべく改革方針を打ち出し、業界代表組織と協議中です。
過去資料(2003年末)



PRIMITIVE-DOUBT

JASRACによるライブハウスに対する著作使用料(?)の巨額な過去分請求が大きな社会問題となってきてます。そんな中、ある日突然(2003.12.10)、著作権法に関わる文化庁の動きがどうなってるのかと言う貴重な情報がもたらされた訳です。文化庁は自らの審議会の報告書に関する国民の意見を募集するのに伴って、テキストを公開したのです。なので、読んでみました。


文化庁「文化審議会著作権分科会報告書(案)」第五章 を読んでの疑問
(by コマプ墨田)

(1)
文化庁「文化審議会著作権分科会報告書(案)」の第五章をもう何回も読んだんだけど、どうも釈然としないスよね。そもそも、こういう審議が続行中だということをほとんどの国民は初めて知ったんじゃないの?ようするに、著作権法どうのこうのと言ったって、この国じゃ、まだちゃんとした指針さえ決ってない状態なんだよ。それをなんとか2004年末までに、一応の見解を出そうとやってる最中ってことな訳ね。

そんで、著作権法を盾に巨額請求してる団体が強硬姿勢でやってる請求方法の実態がネット上で飛び周ってる訳だけど、これらを文化庁報告書案とキッチリ照らし合わせて検討してみた国民の多くは、首をひねりすぎて鞭打ち状態になってるところでは?

まずは、一般人の感覚として、なんでそんなに著作権法だけが過酷なのかという疑問があった訳だよね。明確な侵害行為の確定すら出来てないで、過去の営業期間にわたって巨額の侵害請求が何でできるのかという素朴な疑問を筆頭に、多くの国民が著作権問題に関わって困惑と恐怖を抱いて来た日々。なんでそうなるのみたいな。それもこれも原点は、実は国自体が著作権法の扱いに明確な指針を出せていないという、我々の側の現状認識の欠如が災いしていた訳だ。で、自分としては文化庁報告書案の第五章を重点的に読んだ訳だが、すると、なんだ、国民の一般的な観点は基本間違ってないんじゃないかという結論に至ったのですが?


(2)
まず、現状の著作権法ではこれからの情勢に対応しきれないので、罰則や規程を強化すべきだという流れがあるということだよね。そのなかで、いろいろな議論が行われているということ。で、一方で、著作権侵害をのさばらせないために、権限を強化しようと言う意見がある。しかし、現行の日本の法律などに照らしての困難や問題点、過剰な展開への警戒などを言う意見と拮抗してるように書いてあるんだよね。勿論、現状に問題があるので変えて行こう、そのための議論をしようというのはいい事だ。しかし、議論が終わって決定が下されるまでは、現行の指針が国の見解だということになる訳でしょ。それをまず確認しなくてはならないでしょうね。するとですよ(↓)。

( 65P 法廷賠償精度 )
我が国における不法行為に基づく損害賠償精度は、不法行為者に対する制裁や将来における抑止効果、一般予防的効果を目的とするものではなく、被害者に現実に生じた損害を金銭的に評価し、これを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補填して、原状回復させることを目的としている。(最高裁判所平成9年7月11日萬世工業事件判決) 

と書いてある。これが現状の国の基本方針ということでしょ。違うの? で、一方で「懲罰的損害賠償制度」導入の意見があるものの、これに対してはかなり具体的な理由を伴った慎重意見があることを報告してるよね。けして導入側が主流ではないようだ。繰り返すけど、現状の著作権侵害に関する国の指針は、「被害者に現実に生じた損害を金銭的に評価し、これを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補填して、原状回復させることを目的としている。」ということなんじゃないの?議論の流れもこれを支持する強い勢力があるみたいに書いてあるしなぁ。

さらに続いて、ここ(↓)

(72P 権利侵害行為の見直しについて)
演奏会場提供者、音源提供事業者、カラオケ機器のリース業者、CDのプレス事業者といった例示に挙げられている者全てに対する一般的な間接侵害規定の導入は、我が国の法制にはないものであり困難であるが、教唆者・幇助者に対する差止請求権を明文の規定で認めるべきであるとの意見や、特許法のように、一定の客観的・主観的要件のもと類型的に限定した形の間接侵害規定を導入すべきであるとの意見もあったが、一方で、現行制度においても運用によって適切な対応が可能であること、差止請求の場合のみに間接侵害権も含むことを明文化することにより、他の条文では間接侵害権者は対象にならないという反対解釈を導く可能性もあることから、導入するにあたっては、配慮を要するとの指摘もあった。

ようするに、「間接的侵害規定」と言う概念がある訳だね。同じような線で、これを認めてもっと取締りを強化するべきだという意見があるということなんだけど、やはりこれに対しても慎重意見反対意見があるということでしょ。で、ここではっきりわかるのは、演奏会場提供者(ライブハウス)というのは、間接的侵害をするかもしれない方のグループということでしょ。じゃぁ、著作権侵害があったとされた場合に直接的侵害者にあたるのは誰かと言うと、当たり前だけど、その著作物を使った本人だよ。すると、「間接的侵害規定」さえ現状で導入されておらんのに、なんで演奏会場提供者(ライブハウス)に対して、壊滅的打撃を与えるような全責任を向けることができるの?この場合直接的侵害者は簡単に特定できる訳でしょ。これは国民の素朴な疑問の主軸だったけど、もし、著作侵害が証明されたとしても、やった本人に文句言えばいいんじゃないのということ。で、その際65Pの国の指針がある訳だから、個別の侵害に対しての損害賠償だけを要求するのが筋なんじゃないの。なんで、確認も出来ない過去10年間の総額とかいう話しが出てくるのかどーしても分らないのだけど?

で、さらに、機材の差し押さえに関しても、同じようなもんで、この件をどうするか議論の最中だということだよね。なのに、書面できっぱり差し押さえを行うと断言してるとすれば、これって国の関係団体としてやっていいことなの?矛盾してないスカ?

(3)
国中で勃発してる巨額申請と強制的徴収のあり方を考えると、独占禁止法が何故必要かが良く分るね。当然、権利者側の保護というのは必要だ。しかし、もし、その権利を集中管理する側をほとんど規制も無い状態で運営させるとどうなるかという重大問題が浮上した訳だよね。シュミレーションを飛び越して実社会での現実として先行的に実例が出現しちゃってるということ。こんな、怖い事が現実に起こるのだ、というか、起こってる訳でしょ。これは、文化庁も詳細調査して、議論に反映させる必要があるでしょう。なにせ、ある日突然、勝手に決めた金額で数百万ですとか請求されちゃう訳だよね。しかも、侵害行為があったか無いかは明確じゃなくてもOKだというし、個別の侵害に払うんじゃなくて、可能性があるから全額でこれだとか言われてる訳でしょ。報告書原案を読む限り、著作権者と著作侵害者の関係しか想定してないけど、それではマズイ。この件、文化庁著作権分科会の非常にタイムリーな研究対象なんだと思わざるを得ないんですけど。違うんですか?